17年もITエンジニアをしていると、IT業界は派遣ばっかで奴隷だの人身売買だのという声をよくきいてきました。
2020年にもなるとあんまり聞かなくなったけど、そもそも実際はどんな契約なのか説明できないことないですか?
この記事では
「請負契約」と「準委任契約」の違いはなに?
「準委任契約」があるなら「委任契約」もあるの?
「SES契約」ってなに?
「派遣契約」と「SES契約」の違いはなに?
こんな疑問に、それぞれの契約用語の説明とグレーだブラックだと言われる理由をまじえつつ、各契約を比較しながら解説します。
ユウキも大手SIerに常駐として働いたことあったやろ?
ありましたよ!あれ結局どんな契約形態だったんかな?
当時勤めてた会社は派遣会社じゃなかったから、請負契約だったんかなー今考えるとおかしいなw
「請負契約」と「準委任契約」
- 成果物の完成が目的
- 依頼した成果物の完成によって報酬が発生
- 成果物に対して責任を負う
- 委託業務遂行が目的(成果物の完成は必須ではない)
- 委託業務を遂行することで報酬が発生
- 善良な行いで委託業務を遂行していれば責任は負わない
請負契約とは
請負契約は、発注元(仕事依頼側)が成果物に対する報酬の支払いを約束し、発注先(仕事請負側)が成果物を完成させることを約束する契約形態のことをいいます。
SIer企業がクライアントから依頼されたシステムの開発を請け負うケースや、フリーランスエンジニアがSES企業から小規模システム開発案件を請け負うケースなどがあります。
- 発注元(仕事依頼側)による指揮命令権はない
- 発注先(仕事請負側)は成果物の完成によって契約上の義務を果たす
- 発注元(仕事依頼側)は成果物が完成するまで、報酬の支払いをする必要はない(着手金など一部を先に支払うケースなどはある)
- 発注先(仕事請負側)は成果物に対して、責任を負う(契約不適合責任)
発注先(仕事請負側)の責任は、民法の改正前後で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に改正された。
分かりやすい違いは、システム不具合などの責任は、引き渡し時・仕事の終了時から1年以内であったのが、発注元(仕事依頼側)がシステム不具合を知った時から1年以内になった点。
準委任契約とは
準委任契約は、発注元(仕事委託側)が委託する業務作業に対する報酬の支払いを約束し、発注先(仕事受託側)は業務作業を実施することを約束する契約形態のことをいいます。
SIer企業がクライアントから依頼されたシステムの監視業務などを委託されるケースや、フリーランスエンジニアがSES企業からテスト要員案件などを委託されるケースなどがあります。
- 発注元(仕事委託側)による指揮命令権はない
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行することで契約上の義務を果たす
- 発注元(仕事委託側)は委託業務の遂行した結果に関係なく、報酬の支払いをする必要がある
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行した結果に基本的には責任を負わない(善管注意義務)
- 業務内容が法律行為以外である
「準委任契約」と「委任契約」
- 委託内容が法律行為以外の仕事の場合
- 委託内容が法律行為の仕事の場合
委任契約とは
委任契約は、業務が法律行為であること以外は、準委任契約と基本的には同じ契約形態になる。
委託内容が法律行為の仕事の場合に使われるので、ITエンジニアが契約することはまずない契約形態です。
- 発注元(仕事委託側)による指揮命令権はない
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行することで契約上の義務を果たす
- 発注元(仕事委託側)は委託業務の遂行した結果に関係なく、報酬の支払いをする必要がある
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行した結果に基本的には責任を負わない(善管注意義務)
- 業務内容が法律行為である
「SES契約」=「準委任契約」
SES契約は、準委任契約と同じ契約です。
そもそもSESとは、システムエンジニアリングサービスの略で、クライアントに技術者を派遣することでITエンジニアの技術を提供するサービスのことをいいます。
そのサービスを提供するSES企業が準委任契約をよく使うために、SES契約とも呼ばれるようになったらしいが諸説ある。
- IT業界特有の契約(準委任契約と同じ契約)
- 発注元(仕事委託側)による指揮命令権はない
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行することで契約上の義務を果たす
- 発注元(仕事委託側)は委託業務の遂行した結果に関係なく、報酬の支払いをする必要がある
- 発注先(仕事受託側)は委託業務を遂行した結果に基本的には責任を負わない(善管注意義務)
- 業務内容が法律行為以外である
「派遣契約」と「SES契約」
- 発注元に指揮命令権がある
- 技術者の所属する企業は、労働者派遣事業許可ライセンスが必要
- 発注元に指揮命令権はない
- 技術者の所属する企業は、労働者派遣事業許可ライセンスは不要
派遣契約とは
派遣契約は、労働者派遣事業許可を持つSIer企業などが、発注元(仕事依頼側)に技術者を派遣して、発注元(仕事依頼側)の業務に従事することで報酬を約束する契約形態のことをいいます。
業務内容は様々あるが、発注元(仕事依頼側)が直接指揮命令をすることができる点が大きな特徴である。
- 発注元(派遣依頼側)による指揮命令権がある
- 発注先(派遣請負側)は労働者派遣事業許可を持つ企業である
- 発注元(派遣依頼側)は派遣業務の遂行した結果に関係なく、報酬の支払いをする必要がある
- 発注先(派遣請負側)は派遣業務を遂行した結果に基本的には責任を負わない
ただ、SES契約でも発注元に実際は派遣されて常駐するケースが多いため、派遣契約と混同されてしまうことが実際ある。
たとえば、本来認められていない発注元からの直接の指揮命令(始業時間や終業時間、休憩時間、休日を指示するなど)をしているなどがある。
SES契約で派遣契約と同様の扱いを受けると偽装請負(違法)となり、グレーやブラックだと言われるのはこの辺にある。
偽装請負については東京労働局のサイトを参照してください。
まとめ:業務委託契約(請負・準委任・SES)、派遣契約の違い
IT業界での「請負契約」「準委任契約(SES契約)」「派遣契約」について解説しました。
契約時にITエンジニアはもう1つ大事な契約をします。
それが「秘密保持契約(NDA)」です。
秘密保持契約(NDA)
秘密保持契約(NDA)は、発注元企業の秘密情報を保護するための契約です。
- 発注元が開示した秘密情報を業務以外の目的に使用することを禁止するなど使用範囲を限定
- 発注元が開示した秘密情報を他者への漏洩・開示を禁止し適正な管理を義務づける
ただし、一般に以下のような情報は秘密情報の定義から除外される。
- 秘密保持契約を負う側が既に保有していた情報
- 既に公知、公用であった情報
- 秘密保持契約を負う側の故意又は過失によらないで公知、公用となった情報
- 秘密保持契約を負う側が独自に開発、作成した情報
- 正当な権限を有する第三者から適法に開示を受けた情報
情報漏洩は賠償問題になるので合わせて理解をしておきましょう。
ユウキでした。